
錆転換剤と重防錆~鉄の劣化を防ぐ最新の防錆対策とは
鉄や鋼材は、私たちの生活や産業活動を支える基盤的な素材です。建築物、自動車、橋梁、プラント設備など、あらゆる場面で使用されています。しかし、これら金属材料には大きな弱点があります。それが「錆(さび)」です。鉄は空気中の酸素や水分と反応して酸化し、やがて赤錆となって表面を覆い、腐食が進行します。
錆の進行は構造物の強度を著しく低下させるだけでなく、美観も損ない、さらには安全性にも深刻な影響を与えるため、的確な防錆対策が求められます。
このような錆に対抗する手段として、近年特に注目されているのが「錆転換剤」と「重防錆(じゅうぼうせい)」という二つの防錆技術です。本記事では、それぞれの技術の特徴や利点、使い分けのポイントについて詳しく解説します。
錆転換剤とは?
錆転換剤(Rust Converter)は、鉄や鋼材の表面に発生した赤錆(酸化第二鉄)を化学的に安定化させる処理剤です。赤錆は非常に反応性が高く、金属をどんどん腐食させてしまいますが、錆転換剤を使用することで、赤錆を化学反応によって黒錆(主に四酸化三鉄)へと変換します。この黒錆は非常に安定した化合物で、空気や水分に対して不活性であり、新たな錆の発生を抑えるバリアとして機能します。
錆を「落とす」のではなく「利用する」点が特徴です。錆がある状態でそのまま処理できるため、手間とコストを抑えながら効率的に防錆処理を行うことができます。
錆転換剤のメリット
- 錆を落とさなくても処理可能:手間が減り、作業効率が向上します。
- 防錆効果が高い:黒錆は赤錆よりも安定しており、新たな錆の発生を抑えます。
- 下地として優秀:上塗り塗装との相性が良く、防錆塗料と併用可能。
使用例
- 屋外に設置された鉄骨やフェンス
- 使用頻度が少ない古い農業機械や建設機器
- 手の届きにくい場所での簡易的な防錆処置
重防錆とは?
重防錆とは、鉄や鋼材を過酷な環境から長期間保護するための、高性能な防錆塗装やコーティング技術の総称です。一般的な塗装とは異なり、重防錆は下塗り・中塗り・上塗りという多層構造で構成され、環境に応じた最適な材料が使用されます。
特に自動車、海洋構造物、橋梁、プラント、発電所など、極端な温度変化や塩害、化学薬品などの影響を受けやすい施設で広く採用されています。
重防錆の主な技術
- 亜鉛リッチプライマー:犠牲防食の原理により、鉄より先に亜鉛が腐食することで、鉄の腐食を防ぎます。
- エポキシ樹脂系塗料:非常に高い密着力と耐薬品性を持ち、下塗り・中塗りによく用いられます。
- ポリウレタン・フッ素樹脂系塗料:耐候性・耐紫外線性に優れ、美観の保持にも効果的です。
重防錆のメリット
- 非常に高い耐久性:適切な設計と施工により、20年以上にわたり防錆効果を発揮することも可能です。
- 過酷環境への適応:海岸部や化学プラントなど、極めて腐食環境が厳しい場所でも使用可能です。
- メンテナンス性の向上:長期間メンテナンスの必要がなく、ライフサイクルコストの低減につながります。
錆転換剤と重防錆の使い分け
項目 | 錆転換剤 | 重防錆 |
---|---|---|
主な用途 | 軽〜中程度の錆の処理 | 重防食が必要な構造物 |
処理方法 | 錆の上から直接塗布 | 下地処理+多層塗装 |
特徴 | 簡便・応急処置的 | 長期的・計画的な防食 |
コスト | 低コスト | 高コスト(だが高耐久) |
スペシャルワンの重防錆〜錆転換剤、重防錆の工程・特徴
このサイトを運営している大元の会社、スペシャルワン株式会社は自動車の重防錆事業を主に行っています。
錆びる前の新車を施工することが多いのですが、すでに錆びてしまった部分に防錆施工をすることももちろんあります。
錆落とし
まず初めにジェットタガネやツールを使用して浮き錆を叩き落とします。(錆を全て落としてしまうと錆転換剤の効果はありません)
錆転換剤
その次に錆転換剤を重ね塗りしていきます。
弊社が使用している錆転換剤は、
- 赤サビを黒色皮膜へ転換し、強力な防錆効果を発揮する
- 鉄面に強力密着する
- 優れた耐水性・耐腐食性
などの特徴があり、内部のサビの進行をしっかり止めてから防錆施工を行っています。
下地プライマー
強靭な皮膜を形成する密封剤。隙間に入り込む浸透剤。 密着力の高い下地を作るプライマーなどを使用します。
防錆剤
水性、油性、低溶剤、2液タイプなどお客様のご要望をお聞きし、最適な防錆剤を選択しています。
車の錆にお悩みの方はぜひスペシャルワンまでお問い合わせください!
錆転換剤と重防錆 まとめ
錆転換剤と重防錆は、それぞれの特性を活かした適材適所の活用が大事になってきます。緊急対応や簡易的な補修には錆転換剤が効果的であり、過酷環境下での長期保護には重防錆が最適です。
簡単に言えば、「すでに発生した錆を止めて延命する」のが錆転換剤、「最初から徹底的に錆を防ぐ」のが重防錆です。現場の条件や予算、求められる耐久性を踏まえ、最適な防錆技術を選定することで、安全性と経済性の両立が可能になります。